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きみよりほかにはしるものなき 花かげにゆきてこひを泣きぬ

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小春日和
ちょっと?変化球?なひじちづです。



「小梅、いい子だから、今日はリビングで寝てくれ」

ショックだった。
彼の家に住むようになってから、ずっと同じベッドで寝ていたのに。
彼がお仕事に行っても、彼のベッドは私のベッドでもあったのに。
千鶴とかいう小娘が来て、彼は変わってしまった。
あんなちんちくりんな小娘のどこがいいのかしら。
私のようなしなやかな体を持っているわけでもない。
毛並みはそこそこだけど、それだって私の方がつややかで、触り心地はいいはず。
本当は体触られるのは好きじゃないんだけど、それだって歳三には特別に許してきたのよ。
なのに、私以外の女を、私たちの家に連れ込むなんて!

大丈夫よ、わかってるわ。
歳三は素敵だもの、女が放っておかないわよね。
仕方ないわよね。
でもだからって、私たちのベッドに、私を差し置いてほかの女を連れ込むのは納得いかないわ!
ベッドルームのドアの前で文句言ってやるんだから!

「歳三!大人しくここを開けなさい!あなたと眠るのは、そんな小娘じゃなくて私のはずよ!」

ドアに爪を立てて訴える。
中からは小娘の声が聞こえるけど知ったこっちゃないわ。
そこは!私の!ベッドよ!!
そしてアンタと一緒にいるのは私の最愛の男よ!


どれほどそうしていたのか。
いい加減、疲れて眠くなってきたところでようやくドアが開いて、パンツ一丁の歳三が顔を出した。

「しょうがねぇな、お前は…」
「悪いのは千鶴を連れ込んだあなたじゃない!」

つん、とすまし顔でベッドルームへと入り、ベッドへと上がる。
なんだか部屋の空気が篭ってるのが気になるけれど…彼とベッドで寝るためだもの我慢するわ。
ベッドに千鶴がいるのが納得いかないけれど。

「小梅ちゃんも一緒に寝るの?」
「私は歳三と寝るの。アンタなんかお呼びじゃないわ」
「わりぃな千鶴。おら、小梅はこっちだ」

歳三と千鶴の間に陣取ってた私を、歳三が抱き上げて端に寄せようとする。
冗談じゃないわ!
私が寝る所は、私が決めるのよ!
そして邪魔なのは私じゃなくて千鶴。
どかすなら千鶴をどかせばいいのよ。
イライラしながら、これ見よがしに二人の間に潜り込む。
いつものように彼の脚の間で眠ろうと、ベッドの下方へ向かえば、いやらしく絡ませ合う歳三と千鶴の脚。

「いたっ」
「ッ小梅!」

悪いのは歳三と千鶴じゃない!
私は私の意見を主張するためにちょっとひっかいてやっただけなのに、理不尽だわ!
ふてくされて布団の中で横になれば、頭上から聞こえてくる二人の会話。

「ぁっ、だめですよ…小梅ちゃんもいるのに…」
「布団に潜り込んでるから大丈夫だろ…な?」
「あんっ…だめ…」

大丈夫じゃないわよ。
聞こえてるわよ。
さっきより脚絡ませてんじゃないわよ。
私がいるのに、ナニしてんのよアンタたち!!





昨日の夜は散々だった。
千鶴には蹴られるし(謝ってはいたけど許す気はない)、歳三には蹴落されるし(お詫びのつもりか、朝食がちょっと豪華だったから許してあげるわ)、さらに掛布団まで降ってくるし。
ベランダに出て、日光浴をしながらこみ上げてくる怒りを押し込める。
するとひょっこりと隣のベランダから顔を出す男。
前からことある毎に私に声をかけてきてた男。
私だってモテるんだから!
うちのベランダにひらりと降り立ち、口説きながら擦り寄ってくる男に悪い気はしない。
どうせ遊びだし?
本命はあくまで歳三だし、いいかな?なんて思ったりして。

「あっ!てめぇ小梅にナニしてやがる!」

見つかっちゃった。
痛くって声出しちゃったからかしら。
それにしても最初に私以外の女を連れ込んだのは歳三なのに、私がほかの男とちょっといちゃついただけでそんなに怒るなんて、やっぱり私って愛されてるのね。
隣の男は文字通り飛び上がって逃げて行き、私は歳三に抱えられて部屋の中へ。
油断も隙もねぇ、なんてブツブツ言ってるけど、その言葉、そっくりそのままお返しするわ。
ねえ、歳三は何を考えてるの?

「なあ小梅。千鶴と仲良くしてくれねぇか」
「寝言は寝てから言って頂戴」
「近いうちに、一緒に暮らすようになるんだ。お前だって毎日俺に怒られたくねぇだろ」
「どうして私が怒られること前提なのよ!」

失礼しちゃうわ。
それに一緒に暮らすってどういうことよ。
そんなの今までなかったじゃない。
確かに、歳三はモテるし、昔から知らない臭いさせて帰ってくることは多々あったけど。
そう、多々、あったけど!
そもそも私たちの家に連れ込んだのは千鶴が初めて。
ずっと、私が死ぬまであなたと一緒にいられると思っていたのに、歳三は私よりも千鶴を選ぶのね。





「じゃあ小梅。千鶴に迷惑かけるなよ」
「は?私だけでも大丈夫なんだけど」
「千鶴も、頼むな」
「はい。歳三さんもお気をつけて」
「隣のドラ猫には気をつけろよ!」

歳三が「ケンシュー」とか言う仕事で、今夜は帰ってこれないらしい。
朝も早くから出て行き、昨夜から泊り込んでいる千鶴と一緒に歳三の家に残された。
分かってるわよ。
歳三のことだから、私のご飯を心配して、家政婦として千鶴を泊まらせたことくらい。
でも犬じゃないんだから、ちょっと多めにお皿に入れておいてくれたらちょっとずつ食べるわよ!

「じゃあ小梅ちゃん、ご飯にしようか」
「置いといてちょうだい。いまあんまり食べたくないの」

千鶴と二人きりにされたせいか、気が重くて食欲もない。
心なしか、体もだるくて重い気がする。

「小梅ちゃん?体辛いの?」
「うるさいわね。寝るんだから静かにしなさいよ」

歳三の匂いが染み付いた(最近、千鶴の臭いもする気もしなくもない)ベッドに横たわる。
本当にどうしちゃったのかしら、私。

一眠りして目を覚ます。
相変わらず体調はよろしくない。
寝て起きて、また寝て、を繰り返すけれど、お腹もあまりすかないし、ちょっと食べてまたベッドに戻る。
それを心配そうに千鶴が見てるのも気づいてるけど、本当にだるいのよ、気にしてらんないわ。

そう思っていたのだけど、これはちょっと、本当に具合がよくないわ。
吐きそうかも…
前にベッドに吐いちゃって、歳三に文句言われたから、降りなきゃ…
ベッドから降りて、水でも飲んで吐き気を紛らわそうとリビングへ向かう。

「小梅ちゃん?大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ」

そう返そうとした、つもりだった。
けぽり、とこみ上げてきたものを、逆らうことなく吐き出す。

「小梅ちゃん!大変、病院に行かなきゃ!」

病院ですって!?
私あそこ嫌いなのよ!?
嫌よ、冗談じゃないわ!

必死に抵抗するものの、具合が悪くてご飯もろくに食べていなかったから、ろくな抵抗も出来ずにタオルケットにくるまれて、キャリーケースに入れられてしまった……





「ああ、小梅ちゃん、妊娠してますね」
「え…でも、家猫で、外はベランダくらいしか出ないはずなんですけど…」
「お住まいは?」
「マンションの高層階です」
「同じ階の、隣近所に雄猫いませんか?」
「……お隣に…」
「じゃあその子が父親でしょうね」

私ったら、妊娠しちゃってたのね。
歳三、怒るかしら。
きっと怒るわよね…ま、伝えるのは千鶴だけど。


翌日の夜、帰ってきた歳三の顔は怖かった…
すぐに手術させる。隣に怒鳴りこむ。と言う歳三に「今回だけでも産ませてあげてください」と、真っ向から意見してくれた千鶴を、ちょっとだけ見直したわ。
ちょっとだけだけど。


そうして生まれた子猫を一匹、千鶴が引き取って、大人になったその子を連れて千鶴が歳三の所へ来ることになるなんて、この時は思いもしなかったのよ!







あとがき↓




三浦しをんさんの「春太の毎日」という短編がございます。
それをイメージして書きました。
大好きなんです。
おススメです。
まあ私の様な素人には、あんなに面白いお話は書けませんでしたが。
どの辺で「小梅」ちゃんの正体に気付かれましたでしょうか?
できるだけ、濁して濁して書いたつもりなのですが^^;


一応、小梅ちゃんの子ども達は4匹の設定で、千鶴、千姫、のぶ姉さん、お隣の父猫の飼い主さん、に引き取ってもらうという裏設定があるんですが、まあ別になくても困りませんwwww

あと、小梅ちゃんは黒猫ちゃんで、ひっくりかえすとお腹に白い毛がぽつぽつっと生えていて、それが梅みたい。という裏設定もあるんですが、まあこれも別にどうでもいい設定ですwww
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