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きみよりほかにはしるものなき 花かげにゆきてこひを泣きぬ

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初恋は、年が明けても想い変わらず
新年のご挨拶申し上げます。
先年は稚拙な文にもかかわらず、読んでいただきありがとうございました。
本年も宜しくお願い致します。


新春の初恋のひじちづで、ご挨拶の代わりとさせていただきます。





「歳三、悪いがぬいと千鶴ちゃんの初詣の付き添いに行ってくれ」
「………はぁ?!」


正月に田舎に帰って、甥姪をお年玉という名の小遣いで釣って市民権を得て、寝正月を過ごそうとしていた俺に、家主である兄から命令が下った。


「なんだって、このクソ寒いのに、わざわざ芋洗いに行かなきゃなんねえんだよ!」
「あの二人の初詣は毎年恒例だからな。じゃあ頼んだぞ」


誰も引き受けたなど言っていない。
しかし確かにぬいは俺の姪だけあって器量はいい。
それにその幼馴染で、教え子である千鶴も十分可愛い。
むしろ、日頃の生活を知っているから、ぬいより好感持てる気はする。
なんつーか、まぁ、結局は俺は千鶴がガキの頃から可愛いんだ。


修学旅行の時、約十年ぶりに手を繋いだが、なんとまあ、その手のシックリと収まる感覚。
手の大きさは大きくなっているはずなのに、どうしてああもシックリくるのか。
何故かはわからんが、言えることは一つ。
千鶴は可愛い。


そして初詣というものは、年明けに浮かれて酒飲んで節操をなくしたおっさんや大学生がいるもので。
そこに可愛い盛りの小娘二人放り込むなど愚行でしかない。
特に千鶴。
あのぽやぽやした危機感のない性格。
俺たちはどこであいつの育て方を間違ったのか。
薫なんて危機感と警戒心の塊なのに。
薫がああだから、千鶴はああなったのか。
千鶴がああだから、薫はああなったのか。
どちらかと言えば後者な気がするが、今更どうにも出来ない。


いろいろ考えて諦めの境地に達して、コートに手を伸ばした。
さすがに女子高生二人連れて歩くのが、とおの昔に成人した三十路の間近のおっさんでも、ここ最近の忘年会ラッシュで染み付いた煙草と酒の匂いがするコートはまずいだろう。
ファブだ、ファブ。
俺だって可愛がってる姪っ子と年下の幼馴染に「オッサン臭い」とか言われたら凹む。


いや、千鶴は言わないか。


しかし内心思われても嫌だな。
コート全体にかかるように、あちこちからプシュプシュと振りかけ、ハンガーに掛けてぶら下げる。
これで幾らか臭いも飛ぶだろう。


こたつに戻ってゴロゴロとしながら、面白くもない新年の特番を観る。
つまんねぇ。
ぬいは朝から義姉さんに着物を着付けてもらっていて部屋からでてこない。
甥の作助は友達と遊びに行くと、さっさと出ていってしまった。
自分も通ってきた道とはいえ、こうもつれなくなると寂しいな。
ガキの頃は、どいつもこいつも俺にべったりだったのに、今や俺に懐いてくれるのは千鶴だけか。
そのうち、ぬいと千鶴に彼氏ができたら……考えたくねえ。
俺がおむつを替えてやったのに、あの時見たアレで男咥えるとか……ないない。
ぬいも千鶴も、ずっと俺のそばにいりゃァいい。
しかし寄る年波には勝てん。
いずれその時が来たら、俺は……


「どうするかなぁ…」
「何がですか?」
「…来てたのか」


思わずビビって声が出そうになったが、なんとか堪えて振り返る。
そこには綺麗な着物を着た、(少し幼いが)まさに花盛りと言わんばかりの千鶴がいた。


「明けましておめでとうございます」
「おう、おめでとう」


まったく、可愛く育ったものだ。
その上、慎ましくも筋が通った性根で、なんとも好ましい。
こんな上等の女を、その辺のクソガキにやるとか、勿体ないだろ。


教師としてはあるまじき思考が頭をよぎる。
さすがにそれはまずい。
いくら元が幼馴染でも、教師と生徒のいま、そういうのはマズイ。
ここまで考えてふと気づく。


俺は、千鶴の事が好きなのか?


ただ幼馴染として気に入っているだけなのか、それとも女として好きなのか。


………後者か。
後者だな。
後者だろ。
じゃねぇと、さすがにほかの男にやりたくない、という感情に説明がつかねぇ。
なんだ、そうだったのか俺。
ちょっとまて、犯罪じゃねえか俺。
ぐるぐるぐるぐる、思考が頭を巡って辿りついた結論。


クッソ、何もできねえじゃねぇか。


残念ながら、昔は許されたことも、今は許されない。
大人の俺に許されるのは、幼馴染の笠をきて、迷子になりやすいコイツの手を引くことくらいだ。
しかし大人の男なんだから、他にもヤリたいあんな事やこんな事あるだろ!
卒業したら覚えてろよ、千鶴!
それまでは、俺の敷いた防衛線の中でのんびり暮らせばいい。
誰にも手出しはさせねえ。
こればかりは、教師の立場がありがたいな。


「先生?」
「ん?」
「あの、大丈夫ですか?」
「…大丈夫だ。ちょっと考え事してただけだ」
「そう、なんですか?」


心配そうに見つめてくる千鶴を見つめ返せば、さっと染まる頬。
なんだ、お前も俺のこと好きなのか。
現金なもので、いま千鶴の心を占めているのが自分だと分かれば嬉しくもなるし、なによりやりやすい。
しっかりと手をつないで、離さなければいい。
コイツの卒業と同時に手に入れる。


「まぁ、ぬいの準備ができるまで、こたつに入ってろよ」
「あ、お邪魔します…」


なかば手に入れたも同然、ともなれば余裕が出てくるもので。
晴れ着を着た千鶴を、独り占めで堪能する。


「あの…なにか?」
「いや、やっぱり日本人は着物だと思ってな」
「はあ…お好きなんですか?」
「嫌いじゃねえ」


千鶴が着ている分には。
なんせ可愛い。
ぶっちゃけて言えば悪代官ごっこまで妄想もふくらむが、それを千鶴に言うほど馬鹿でもなければ女に不慣れなわけでもない。
なんでもいい、千鶴なら。
いっそ裸でも困らねぇ。
むしろ早くあと2年経って、裸になれる関係になりたい。


「初詣、毎年ぬいと行ってんのか?」
「はい。以前は薫や作助くんも来てたんですけど…」
「ああ、姉ちゃんと歩くの嫌だって年になったか」
「はい。そうしたら薫も行かないって言い出しまして…それからはおじ様が付き添って下さってたんですが」
「兄貴は御役御免で今年からは俺だ」
「えっ……えぇぇ?!」
「ちゃんと手ぇつないでてやるから、はぐれなくていいだろ?」
「はぐれても、今はケータイもありますし、地元だから迷子にもならないと思うんですけど」
「ンだよ、俺と手ぇつなぐのはもう嫌だってか?」
「そっそんなんじゃありません!」


本当に可愛いな、千鶴は。
お前が手をつなぐのが嫌じゃない事くらい、これまでのことを思い出せばわかってる。
千鶴をからかいながら時間を潰せば、とたとたと足音を立ててぬいがリビングに現れた。


「お待たせ~」
「遅い!」
「全然待ってないよ~」


千鶴は優しい。
ぬいにくらいキツく言っても構わねぇだろうに。


「さっさと行くぞ」
「え、オジサンが保護者なの?」
「お前の親父に行けって言われたんだよ」


早くしろと二人を急かし、コートを着て外に出る。
寒い。
なんだってこの寒い中、わざわざ外に出なきゃなんねぇんだ。


「寒い…」
「すみません…」


文句を言いながらも手をさし出せば、控えめに乗せられる千鶴の手。


「…オジサンと千鶴ちゃんって、まだ手ぇ繋いでるの?」
「迷子防止だ」
「もうならないのに…」


唇を尖らせて文句をいいながらも、繋がった手が離れることはない。


「なんか私……お邪魔?」
「な、何言ってるの!?」
「バカ言ってないで行くぞ」


余計なこと言いやがって。
千鶴が意識しちまうだろうが!


「邪魔になったら別行動するから言ってね」
「お前一人にしたら、俺が兄貴に殺されるだろうが」


千鶴と二人きりになりたいのはやまやまだが、流石にそれはまずい。
ぐっと千鶴の手を握りつつ、神社へ向けて歩く。


たどり着いた神社はまた、地元の別に有名でもなんでもねえ神社だっつーのに、結構な人混みで…


「帰りてえ…」
「それなら、ここで待っててくださっても…」
「それじゃ俺がついてきた意味がねえだろ!」


むしろここからが本番だっつーのに、このぽやぽやした娘は!


「行くぞ!」
「はい」



結果は推して知って欲しい。
すぐに人波に飲まれそうになる千鶴の手を、もっとしっかり繋ぐためにいつしか恋人繋ぎで掴んでいたのもある意味当然で。
反対の右手は、というか腕はぬいに掴まれ。
いっそ千鶴もそうやってしがみついてくれりゃ良かったんだが…


なんとか参拝を済ませ、甘酒をひっかけて僅かな暖をとって家に帰りついた頃には、全員グロッキーだった。


「私もう着物脱ぐー!」


家に入るなり、自室に駆け込むぬい。
アイツはあれだけのために着物着たのか…義姉さんも難儀だな…


俺は早々にコタツへ潜り込んでひと息つく。


「っあ~~。やっぱいいな、コタツ。俺も買うかな」
「先生のおうち、ないんですか?」
「ああ。いらねえと思ってたんだが、やっぱあると良いもんだな」
「でもコタツって眠くなっちゃうんですよね…」
「眠かったら寝てもいいぞ」
「いえ、着物が崩れちゃいますから」
「崩れたら、義姉さんに直してもらやいいじゃねぇか」
「いえ、自分で直せますけど…」


自分で着てきたのか。
悪くない。


「直せんならいいじゃねえか」
「でもお行儀悪いです」
「赤ん坊の頃からここでしょっちゅう昼寝してたんだから、誰もンなこと気にしねえよ」


そう言った気持ちに嘘はなかった。
いつしか俺自身、嫌いな人混みによる疲れと、コタツの暖かさにウトウトし始める。
それは千鶴も同じで、うつらうつらとし始める。


「千鶴、眠いなら横になれよ」
「はい…」
「ほら、こっち来い」


舟を漕ぎはじめた千鶴に、声をかけて座布団を折ったものを枕として差し出す。
が、くたりとした千鶴は俺の腕の中へ。
そういや、ガキの頃もこうやって寝てたな。
体はデカくなっても、この男に対しての警戒心のなさ。
やはりこいつの手を離してはいけない。
さすがに俺や薫以外にこんな無防備なことはしないと思いたいが…





*



「なにこの二人」
「あらあら。千鶴ちゃん、赤ちゃんの時と変わらないわね」
「今日も手をつないで歩いてたよ」
「…本当に変わらないのね」
「大丈夫なの?三十男と女子高生だけど」
「いざとなったら、歳三さんに責任とってもらって、千鶴ちゃんをいただきましょう」
「…千鶴ちゃんが叔母さんか…親戚付き合い悩まなくて良さそう」
「千鶴ちゃんに変な男近づかないように、ぬいも気を付けてね」
「うん」



結局寝正月になっているが、腕の中には千鶴。
枕元では義姉と姪が好き勝手に言っているのが聞こえたが、とりあえず味方ではいてくれるらしい。
その事にわずか安堵しながら、千鶴を抱え直してもう一度眠りについた。
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