きみよりほかにはしるものなき 花かげにゆきてこひを泣きぬ

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初恋をもう一度、はじめる前。
初恋をもう一度、の二人を第三者からみるとどうなのか。
と、思ったら出来ました。
原田先生視点です。
時間軸としては、前作より前の話になります。
入学式から2ヶ月。
6月に行われる1年生の修学旅行、行き先は京都。
それなりにクラスメイトとも仲良くなったところで行われるこの一大イベント。
昨年まではよかった。
そう、昨年までは。


今年は少し、事情が違う。
なぜなら一人、女生徒がいるからだ。
そしてこれまでは学園長が引率で来ていたのが、教頭が1年のクラスを持っていることもあって教頭へと交代。
生徒も教員も、この二人との距離を測りかねていた。


しかし普段生活する上では、周りの男子生徒ともうまくやっていけているらしい雪村も、今回ばかりは疎遠になっているようで。
というか、思春期真っ只中のクラスの男子が、自由行動に雪村を誘うのをお互いが牽制しあった結果、はじかれちまってるんだが…
その状態に職員室でしばし頭を抱えていた教頭が、ハッと気づいたように顔を上げて言った事は、その場に居合わせた職員の間で伝説となりつつある。


「そうか。俺が面倒見りゃいいんじゃねぇか」
「おいおい、いいのかよ。自由行動だぞ?」
「そうだぜ土方さん。あいつらだって、可愛い女子高生と観光地まわりたいだろ」
「あいつらに任せたら、ぽやぽやした雪村が他校の奴らに絡まれたり、迷子になったりするだろ」


何故だか説得力はあった。
確かに、あのトラブルを呼び込む体質の雪村ならありえる、かもしれない。


「まあトシに任せておけば大丈夫だろう!」


学園長がこう言うんだから、まあいいんだろう。
あの時はそう思った。
今、目の前のこの風景を見るまでは。


「おう、お前らここにいたのか」
「お疲れ様です」
「ああ…」


担当クラスの平助たち生徒数名と京都市内を歩いていた時、ふらりと現れた鬼の教頭と、学園唯一の女生徒。
その手は繋がれている、普通に。
思わず凝視する俺達の視線に気づいたのか、眉間に皺を寄せて睨まれる。


「なんだよ」
「いや…なんで手ぇ繋いでんだ?」
「ん?……あぁ。こいつと歩く時は手を繋ぐもんだと思ってた」
「私も…お兄ちゃん…土方先生と歩く時は手を繋ぐのが普通だと思ってました」


なんなんだ、この幼馴染は。
疎遠になったって言う10年前から、二人の関係はまったく変わっていないらしい。


「さすがにもう高校生なんだから手を繋がなくてもいいだろ…」
「そうか?現にここに来るまでも、手を繋いでないとちょろちょろして見失いそうだったけどな」
「あ~、千鶴ってけっこうちょこちょこ動き回るよな」
「そんなことないと思うんだけど…それに、もう小さな子どもじゃないんだから迷子になんてならないよ!」


意気込んで言う雪村に、胡散臭そうな顔の土方さん。
ものは試しだ、とばかりに雪村へ地図を差し出した。


「え?」
「現在地から次の目的地まで行ってみろ」
「はっはい」


地図を広げてにらめっこを始める雪村。
次第に手がふるふると震え始め、恐る恐る顔を上げた。


「せんせぇ…」
「…なんだよ」
「今いるとこが分かりません…」
「……ここだ。ちなみに目的地はここ」
「あっ、あった!…じゃあ…こっち?」
「逆だ。お前、京都市内ほど旅行者に優しい地図はないぞ!?」
「ふえぇぇ~」
「……お前今から地図の読み方勉強しながら移動だからな」
「はい…」


確かにこれは、手を引く必要があるかもしれねぇな…
傍から見ててこれでは、当事者の土方さんの気苦労たるや。
じゃあな。と言って、地図を持つ雪村の鞄を普通に右手で持ってやりながら、左手は変わらず雪村の右手と繋がっている。


「…俺も千鶴の幼馴染のはずなのに!」
「諦めろ。お前は小学校からだろ。あっちは雪村が生まれた時からの古株だ」
「そんなの不可抗力だ~!」
「土方さんは雪村のおむつも替えて、風呂に入れたこともあるらしいぞ」
「なんだそれ!じゃあ、ひょっとして千鶴のあんなとこやこんなとこ…」
「まあ、見てるだろうな」
「羨ましすぎる!」


その発想はどうなんだ、平助。
しかし他の連中も考えることは同じらしい。
羨ましい、妬ましい、教頭が憎い。と口々に文句を言っている。
そんなに見たけりゃ、保体の教科書眺めてろ。


「しかしあの二人、そのうち『結婚しました』とか言い出しそうだな」
「うわ~!そんなの犯罪だ!」


犯罪だ。
確かに犯罪なんだが、見ていて妙にしっくりくる二人でもある。
なんつーか…


「熟年夫婦?」
「言うなよ、左之さん!」


喚く平助を黙らせて、俺達も移動を始める。
こりゃあの二人が幼馴染だって話広めないと、面倒なことになりそうだな。
…いや、放っておいてもこいつらが広めてくれるか……


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