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きみよりほかにはしるものなき 花かげにゆきてこひを泣きぬ

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若紫 14
ぬるっとひじちづ。


先の話をあげた後、友人から「そこで切るのはどえす」と文句言われたので、さっさと上げます……そんなドSですかね?


というかストックはあるんですよ。
ぶっちゃけ、今回入れてあと2回で若紫は一先ず終ります。
その後この二人でいろいろ書いていきたいな、と思っております。



「昨日の事に後悔がないと言えば嘘になるけど…」



「けど?」


そう、答えを促してみたが、千鶴は首を振って黙り込んでしまった。
心に溜めこんでることは言ってほしいが、なかなか言うような人間じゃない事も、残念ながら知っている。


「ちづ、来い」


呼べば素直に傍に来て、隣に座る。
隣に座った千鶴の手を取って、もう一度促してみる。



「ちづ、言えないか?」



そう言えば、悲しそうな顔をして一つ肯く。
言えねぇなら…


「なんでそんな顔してんだよ」


千鶴の顔に手をやって、俯いたままの顔を上げさせ額をぴたりとくっつける。
触れたところから伝わる千鶴の体温が心地いい。
少しでも、千鶴も同じように感じていればいい。



「ごめんね、お兄ちゃん」
「そんなんが聞きてぇんじゃねぇ。わかってんだろ」



くっつけた額をそのままに千鶴を見つめれば、目の前の千鶴の目に涙が滲んでいるのが見えた。
泣かせてぇワケじゃねぇんだ。



「ちづ、泣くほど嫌か?」
「…いやじゃ、ない」
「じゃあ何に引っかかってんだ?」
「…お兄ちゃんの事はもう諦めようとしてたの」
「うん?」
「お兄ちゃん、私の王子様じゃなかったんだって」



その言葉に、少し笑えた。
いま千鶴の中には、大人になろうとしてる千鶴のほかに、まだ俺の後ろをついて回ってた小さな千鶴が居るらしい。



「王子様なんて、夢物語だって分ってるんだけど…」
「ちづはちいせぇ時から『王子様』が大好きだったもんな」
「・・・覚えてるの?」
「俺の事『ちづの王子様』って言ってたじゃねぇか」



そう言えば、くっつけていた額を離して、顔を真っ赤にして「忘れて~!」ときた。
腕を突っぱねて体ごと離れていこうとするのをやり過ごして、体ごと抱え上げて向かい合わせに膝に乗せる。
昨日も触れたんだから分ってる事なんだが、それでも自分とは違う華奢な体にくらりと眩暈がした。
簡単に俺の腕の中に納まる。
俺だってまだそんなにガタイはよくねぇんだが(これからまだ伸びるはずだ)、それでも千鶴は小さく感じる。



「忘れられるもんじゃねぇよ」
「うう~」
「ほら、続きは?」
「……それで、ね。諦めようとしたんだけど…なかなか難しくて」
「俺は間に合ったか?」
「え?」
「ちづはまだ、俺の事好きなんだろ?」
「…うん」



困ったことに、なんて余計なこと言いやがるから、また額をくっつけてやる。
今度は勢いをつけて



ゴッ



……ただの頭突きだが。


「いっった~ぃ…」
「~~っ。な、んでこまんだよ」
「お兄ちゃん…自分も痛いならしないで…」
「わりぃ…で?」
「で?」
「俺は千鶴に惚れてる。千鶴も俺の事が好きだ。なんで付き合わねぇんだよ」
「・・・・・・信用できないから?」
「男としての俺が、だろ?幼馴染としての俺は?」
「信じてる」



即答の上、真っ直ぐ見つめられる。
いい目だ。
それでいい。
そのまま真っ直ぐ、俺を見ててくれ。



「幼馴染の俺と、男としての俺は別人か?」



この質問には少し戸惑ったみてぇだが、一応否定の意味で首を横に振ってくれた。



「そりゃ少しは違って見えるかもしれねぇが、ずっと一緒に居た幼馴染の俺も、今ちづに惚れてる男としての俺も、どっちも同じだ」



他の女には酷いモンだったが、幼馴染としての俺はちづに対しては、確かに少し距離はあいちまったがそれでも誠実だったはずだ。


頭突きをしたせいで二人して手で押さえる為に話していた額を、もう一度くっつけて囁くように言う。



「“俺”の中に“幼馴染”と“男”の両方の“俺”が居る。ちづは“幼馴染”の俺と、断片的な“男”の俺しか知らねぇだろ?」
「うん…」
「これからまだ、ちづが知らねぇ“俺”も出てくるだろうし、俺の知らねぇ“千鶴”も出てくると思う。それを一緒に知っていきてぇんだよ」
「そんな…お兄ちゃんが知らない私なんていないよ…」
「居るに決まってんだろ。現に、昨日みてぇな千鶴は初めて見たしな」



『昨日』『初めて見た』で、なにを指したのか分ったらしい千鶴は俯いてしまったが、耳まで真っ赤になっているのが見える。
照れている姿も可愛いのでそのまま抱きしめてやれば、大人しく肩に頭を預けてきた。



「ちづ、それでもダメか?」
「・・・・・・」
「一緒にお互いの事、もっと知っていくんだ」
「・・・お兄ちゃんの知らない私は、“嫌な子”かもしれない」



それでもいいの?と呟く声に答えるように、すぐ傍にある千鶴の頭に頬ずりをする。
肌に触れる千鶴の髪が気持ちいい。



「かまわねぇよ。それはちづの一部分だろ?お前の大部分が“良い子”なのは重々知ってる」



だからこそ、昨日のことは驚いたんだが。



「俺だって、ちづに見せたくねぇトコあるぜ」
「お兄ちゃんが?」



驚いたように体を離し、くりくりとした目を俺に向ける。
そんなに驚くようなことかよ。



「ああ、例えばちづの事に関しちゃ、俺ァ周りの人間から“嫌なやつ”ってずっと言われてるな」



ちづにちょっかい出す奴は、みんな潰してきたからな。


しかしそんな事を知らない千鶴は、「うそだ~」なんて言って信じようとしない。
それでよかった、これまでは。
これからはそうはいかねぇ。
そいつらと同じ土俵に俺も上るからな。



「そんなモンなんだよ、ちづ。そんなちょっとのことで嫌になる程度の気持ちじゃねぇんだ」
「本当に?」
「その程度なら、今までと同じように幼馴染のままか、そのまま会わなくなってたか、だな」
「そっか…」
「そうだ」


千鶴はもう一度「そっか」と答えて、また体を預けてきた。


……このまま寝ねぇよな?
いやガキの頃は、よくこうやって寝ちまってたからよ…



「ちづ?」
「ん…」
「改めて聞くが…俺と付き合ってくれるか?」




すんげぇドキドキしてんな、俺。
きっと千鶴にもそれは聞こえてるだろう。
ちィと恥ずかしいが、鼓動に乗って、俺の気持ちが少しでも伝わればそれでいい。



「こんな私で、よければ…」



千鶴の答えにホッとして、大きな安堵の息を吐いた。
あ~まだ心臓がバクバクしてるぜ…



「ば~か。ちづがいいって、昨日から言ってるじゃねぇか」
「うん」



崩れ落ちるように、千鶴を抱えたまま体勢をかえてソファに寝転がる。
千鶴が猫のように俺の胸に擦り寄ってくるのを頭を撫でてやれば、小さく嬉しそうな笑い声が聞こえた。
ずっとそうやって傍で笑っててくれ。





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