きみよりほかにはしるものなき 花かげにゆきてこひを泣きぬ

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二日にスル事
毎日暑いですね。
毎日暑くて嫌なので、季節外れの寒いお正月のはらちづです。
直接表現はないんですが、自己責任でお願いします。
しかしながら、本当はこの二人、喪中なんですよねすみません。
年が明け、近所や偶然再会した龍之介へ年始の挨拶に行き、先々で酒を振る舞われ、少しいい気分になった頃に左之助は帰宅した。
帰れば、男連中が年始の挨拶をしている間に女房たちは初湯に行っていたらしい。
恋女房の千鶴が下ろした髪を櫛でとかしていた。


女房を ちっと見直す まつのうち


そんな川柳が脳裏をよぎったが、すぐさま考え直す。

―馬鹿言うな。千鶴はいつでもいい女だ。

そして何食わぬ顔で声をかけた。

「初湯か?」
「はい。お帰りなさい、左之助さん」
「ただいま」

火鉢のそばへ腰を下ろせば、千鶴が手早く髪を簡単にまとめ、立ち上がって雑煮とお屠蘇の準備をした。


千鶴の酌を受けながら、ゆるりとした時を過ごす。

「年始はすみましたか?」
「ああ。どうせ近所と龍之介のとこくらいしかないしな。にしても、行く先々で振る舞われて、酒に強くないやつなんかフラフラしながら歩いてるぜ」
「まあ」

ふふ、と笑みをこぼす千鶴を見ながら、ぽつりとこぼす。
千鶴の作ったものに文句はない。
文句はないのだが…

「しかし、こうも雑煮と屠蘇ばっかりじゃな…新八じゃねぇが、米の飯と普通の酒が恋しいぜ」
「あと一日ですから」
「そりゃそうだけどよ」

そう応え、口元に杯をやりながらチラリと視線を妻へとやる。
すると千鶴から視線を投げてきた。

お。

と、左之助は思った。
これはイケるんじゃねぇか。と。

「左之助さん、今日は二日ですから…」


姫始めか。


と思ったが口には出さない。
そもそも、千鶴からそんな話が出るとは思えない。
となれば、二日にすること…


年始、初荷、鳥追…

「今日、近所の子供たちと…」

そう言って出てきたのは宝船の絵。

「ああ、初夢か」

まぁ、千鶴にはそんなとこだろ。

「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」

誰が考えたのか知らねぇが、よくこんな回文を考えたもんだ。
声に出して読みながら、なんの感慨もなく思う。

―なみのりふねの おとのよきかな
音のよきかな、か…

それなら舟を漕がせてやろうじゃねぇか。

「千鶴。二日の夜にスル事はまだあるだろ」
「二日の夜に…ですか?」
「ああ…」

意識して、艶を含んだ声を出しながら、探るように千鶴の顔を覗きこむが、きょとんと目を丸くして考えるばかり。

我が意を得たり。

と思いながら、左之助はふっと笑みをこぼす。

「知らねえなら構わねぇよ。後で教えてやる」
「はい、お願いします」




憐れ、初な恋女房殿。
夫の棹で舟を漕ぐ。
千鶴の頭の下で、ぎぃ ぎぃ と枕が鳴っていた。


二日の夜 浪のり船に 楫(かじ)の音


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