きみよりほかにはしるものなき 花かげにゆきてこひを泣きぬ

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江戸の女とはこういうもの
梅酒を飲みながら思ったんです。
そういえば雪村さんって、生まれは東北(お酒が強いイメージ)で、育ちは江戸(年がら年中お酒飲んでる人が大勢)だなって。
そうしたらこうなりました。
ギャグです。
ネタですからー。
その日はいつものように広間で夕餉をとっていた。
ただ、大幹部は所用で席を外しており、どこか気楽さはあった。
そしていつものように互いの皿の上を狙い合い、いつものように安酒で喉を潤していた。
それが思わぬ事態を招いたのは、平助と新八のせいだ。

「千鶴ちゃんもちょっと飲んでみろよ」
「いえ、私はお酒は…」
「だ~いじょうぶだって!そんないい酒じゃねえから!」

止めるべきか、と思ったが、確かにちょっとやそっとで酔えるような高い酒ではない。
少しくらいなら問題なかろうと思ったのが間違いだった、と気づくのに時間はかからなかった。
平助に注がれ、総司に茶化されながら、「もうこれで…」と断りながらも断りきれず盃を重ねていく雪村。
その様子はいつもとなんら変わりなく、「いけるクチなのか」と周りが思い始めた時だった。

ゴッ

と、鈍い音が広間に響いた。
そしてさっきまで千鶴のそばに居たはずの平助が、部屋の隅で伸びて転がっていた。
突然の事態に状況が飲み込めず、目を白黒させる我々の前で、ゆらりと雪村が立ち上がって口を開いた。

「しっつこい男だねぇ。いらねえってんのが、わかんねえのかぇ」

その言葉遣い、態度は普段の雪村とは全く違うもので。強いて言うならば、酔っ払いに絡まれた深川あたりの芸者というべきか。
いち早く、正気に戻った総司が、面白そうに目を輝かせている。

「わ~。千鶴ちゃんもちゃんと江戸っ子だったね~」

そういう問題ではない。
吹っ飛ばされた平助の元に新八が駆け寄り、左之が雪村を宥めようと声を掛ける。

「ま、まあ千鶴…無理に飲まなくていいからよ。ほら、座って飯食えよ」
「おマンマはいただきますよ、なんせアタシが作ったんですからね」

ごもっとも。
しかしなんと言うか…なんと言えばいいのか。
座り直す仕草からして、いつもの良家の子女らしい仕草とは違い、どこか粋な、小気味いい仕草となっている。
そして己の膳に手をつけながら、膳に残されていた盃を飲み干す。

「にしたって、やっすい酒だねぇ。こんな安酒で女を酔わせられるとでも思ってんのかぇ、そこの坊ちゃんは」

「うわ~きっつー」
ぼそりと総司の言葉が聞こえてきた。
平助が意識をなくしていてよかった。
もし聞いていれば、自信喪失していただろう。

「すまねぇな、千鶴。もっと稼ぎがありゃあ、いい酒飲ませてやれんだがよ」
「…原田さん。ちょいと気になっていたんですけどねえ…」
「ん?どうした?」
「あにさん、ちょいと馴れ馴れし過ぎやしませんかねえ?」

ぶっ

「…お前ら…」
「ごめん」
「すまん」

噴き出した酒を総司と拭きながら詫びる。
雪村も馴れ馴れしいとは思っていたのだな。
しかし…

「てめぇで拵えたおマンマを肴に、こんな安酒飲んで酔える女がいるなら、会ってみたいもんさ」

いちいち正論で図星をさしてくるな。

「普段の千鶴ちゃんに、賄い頼り過ぎたかな?」
「そうかもしれん」

考えてみれば体の小さな雪村に、大勢の男の賄いを作らせるのは負担になっていたのかもしれん。
父一人、子一人の雪村には見たことない程の量の食材を相手に、毎日包丁を握っていることだろう。
改めて副長に進言してみよう。


その前に、目の前の雪村をどうにかせねばならんが。

「雪村、あんたの言う事はどれもお説ごもっともだ」
「認めちゃうんだ」
「ごもっともだが、平助を殴り飛ばすのはやりすぎだ」
「お言葉ですがねぇ、斎藤さん。ああでもしないと、誰も助けちゃくれませんからねぇ」
「しかし…」
「それとも、あのまま酔い潰れてりゃよかったとでも?そうなりゃ、誰がこのお膳を片づけてくれるってぇんだぇ?」
「それは潰しちゃった人が責任取るんじゃないかな」
「あの二人に洗いものねぇ…」

ちらりと視線を流す雪村。
視線の先には、未だ意識の戻らない平助と、それを介抱する新八。
確かに、家事が出来そうには見えない(実際に褒められたものではない)

「結局アタシの仕事が増えそうじゃないか。それくらいなら、伸してさっさと片付けちまわァ。ほら、あにさんたちもさっさと腹に入れとくんな」

いつもとは違う、妙に迫力のある雪村に逆らってはいけない気がして、平助をそのままに全員急いで腹におさめる。
食べ終わった膳を勝手場に持って行けば、チャキチャキと雪村が洗い、竃の火を落とし、一通りの家事を終えて部屋に戻り、布団を敷いたかと思えばそのまま倒れ込んで眠り始めた。

「寝ちゃったね」
「寝たな」
「千鶴には酒は飲ませねぇ方がいいかもな」
「え、どうして?楽しいじゃない。ちゃんと仕事もしてくれるし」

確かに仕事はきちんとこなしていた。
しかし小兵の平助とは言え、成人男子一人殴り飛ばせる女の酔っ払いなんぞ、扱いを間違えれば大惨事を起こしかねない。

「それにあの小股の切れ上がった感じ。土方さんの好みだと思うな」

それは、副長の為になるのだろうか…

「僕も嫌いじゃないけど」

いや、やはりやめよう。
過ぎた酒はいけない。
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