きみよりほかにはしるものなき 花かげにゆきてこひを泣きぬ

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花冷え
いつもお世話になっている章さんのお誕生日に…と思って書いたのに、なんのこっちゃ分からない小話になってしまったひじちづです…
よかったら章さん、持って帰ってください…
ひじ受け書いてみようかと思ったんですけど、無理でした←



ぽつり、と頭に水滴が当たった気がした。
そっと当たったあたりに手をやって天を見上げ、曇天の様子を伺う。

「降り始めたな。急ぐぞ」
「はい」

せっかく土方さんが荷物持ちとして連れ出してくれたというのに残念だ。
予定では降る前に帰れるだろう、との予想だったのに、行った先で引き止められてしまい降られることとなってしまった。

『武士は走るものではない』

という前提のもと、急ぎ足にはなっても走る事はない。
これが捕物になると事情は変わるのだけど…幸い、濡れて困る書状は渡してきた。
強いて言うなら、刀が濡れて錆びると困る、というくらいだ。
しかし、そんな私達を翻弄するように雨足は強くなり、遂に諦めた土方さんは茶屋で雨宿りする事に決めた。

「くそっ、あのオヤジ…金にものいわせて買った古刀を無駄に自慢しやがって…」

ブツブツと文句を言う土方さんに、乾いた笑いを返しながら、お店に借りた手拭でいくらか濡れてしまった髪を拭う。
静かになった土方さんを見れば、雑に髪を拭い、刀を抜いて濡れていないか確認をしている。
その凛とした姿に一瞬目を奪われたが、お店の人がお茶を持ってきたことで意識を引き戻された。

「止みそうにねぇな…」
「傘をお借りして帰るしかないでしょうか」
「ま、そりゃ最終手段だな」

手持ち無沙汰に、二人でお茶を啜りながら外を眺める。
窓の外では、桜が雨に打たれている。

「あの桜も、もう散っちゃいますね」
「この雨じゃあな…」

とくに会話もなく、お茶をすすりながら桜を眺める。
いつも多忙な土方さんには、いい息抜きになったかもしれない。
結局雨は止まず、お店で傘を借りて屯所へと戻ることになった。
視線の先には、先程の桜。

「お前と二人で雨の中花見ってぇのも悪かねぇな」

そう言って歩きだした土方さんの背中を追って、私も歩きだした。
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